2020年春、
絶望の淵から誕生した『モーテル・アネモネ』

当初、2020年6月に上演予定だった『MIDNIGHT MOTEL』。しかし、新型コロナウイルスの蔓延により4月頭に同作の無期限延期を余儀なくされた。
そこから1ヶ月に満たない期間で、企画・上演されたのが、自宅からチェックインできるオンラインイマーシブシアター『ROOM 101』だ。

泊まれる演劇ではこの作品を皮切りに、『MIDNIHT MOTEL』にゲストの皆さまをお招きできるその日を夢見ながら、計4作品の“prequel(前日譚)”の制作がスタートする。

泊まれる演劇 In Your Room『ROOM 101 2020.05.01 - 06 オンライン上演

突然行方不明になったカメラマンの清瀬仁。モーテル・アネモネのロビーで彼の写真展が開かれる予定だったが、ずっと連絡が取れない状態になっていた。
そんな時、アネモネに1本の電話が。

──清瀬仁を誘拐した。警察に連絡すれば命はない。身代金はホテルのロビーに展示してある清瀬の作品だ。

以前から身の危険を感じていた清瀬は、万が一の時に備え犯人に繋がるメッセージをアネモネの至るところに隠していた。清瀬から依頼を受けた堅山ヒロは探偵助手を集め、メッセージを元に捜査を始める。

容疑者は清瀬と同じ日にアネモネにチェックインした、女子大生の宮部よると、小説家を名乗る日々谷栄人。
探偵助手たちは部屋に取り付けられた監視カメラで2人とコンタクトを取りながら事情聴取をはじめる。2人とも容疑を否認するが、しきりに顎を触っている。嘘をつく人間は顎を触るという。どうやら何か嘘をついてるようだ。

探偵助手に届いた招待状、そこには清瀬からのメッセージが隠されていた。堅山と探偵助手によって謎が解き明かされ、清瀬を誘拐した犯人は日々谷だと明らかになる。

一件落着かと思われたが、逆上した日々谷が堅山を襲い、現場に居合わせた宮部よるに刃を向ける。犯人を止めるべく探偵助手が清瀬に助けを求めると、とあるレコードを回せとメッセージが。そのレコードには、清瀬と日々谷の浅からぬ関係の真実が隠されていた…。

  • 宮部よるYoru Miyabe
    清瀬に好意を抱き、彼を追いかけてモーテルアネモネにやってきた。自分は女子大生だと言う彼女は咄嗟に“顎”を触っていた…。
  • 日々谷栄人Eito Hibiya
    自称小説家。幼い頃の事件がきっかけで清瀬に強い恨みを抱いている。The Beatlesが好きで、彼の部屋にはレコードが飾ってある。
  • 堅山ヒロHiro Katayama
    モーテル・アネモネのコンシェルジュ兼ホテル探偵。ホテルで起こった事件を探偵助手と一緒に解決していく。謎が華麗に解き明かされると、思わず『Perfect!!』と叫んでしまう。

泊まれる演劇 In Your Room『ROOM 102 2020.06.24 - 29 オンライン上演

モーテル・アネモネを舞台に恋愛映画の撮影が決定した。監督は中堅クリエイターのファンキー順。彼から案内状を受け取ったエキストラがアネモネに集められ、館内案内を兼ねた”リモートロケハン”が開催される。このロケハンを仕切るのは、コンシェルジュの堅山ヒロと結城マイ。また、ロケハンには出演俳優も同席するようだ。主演の月下雄星と、有名女優のアンジュである。主演女優はスケジュールが合わず欠席とのこと。

ロケハンが始めようとした時、アンジュが脚本についてファンキー順に不満を訴える。アンジュの押しに負け、急遽その場で脚本の直しをしていた時、アンジュの背後に髪の長い謎の女性が。

そこからアンジュとは音信不通に。幽霊が出たとパニックになるファンキー順と月下雄星。結城マイが彼女の身を案じて部屋に駆けつけるが姿はない。代わりに、部屋にはロケハンの案内状だけが残されていた。案内状を見ると、【あ そ ぼ う】と血で書かれた文字。幽霊の仕業なのか、人間の仕業なのか。堅山はエキストラに協力を仰ぎ、アンジュが作った案内状に隠されたメッセージを解読する。

エキストラの活躍により、遂にアンジュの居場所が判明した。急いで向かうと、そこにはアンジュではなく結城マイが隠れていた。そして一連の幽霊騒動は、アンジュと結城マイの自作自演だったと明かされる。映画のヒロインになりたかったアンジュは、その気持ちを利用したプロデューサーに傷つけられた過去を持っていた。失意のアンジュはこの映画をめちゃくちゃにし、自分も死ぬつもりだったのだ。

目的が果たせず、深い悲しみの中でモーテルの屋上から飛び降りようとするアンジュを、堅山やエキストラたちが説得する。熱い言葉に胸を打たれたアンジュの瞳から、綺麗な涙がこぼれ落ちた。

  • アンジュAnge
    映画女優。悪徳プロデューサーへ復讐するためにとある計画を立てる。荒んだ自分を救ってくれた、アネモネやエキストラに感謝している。
  • ファンキー順Funky Jun
    映画監督であり、絵画や演技など様々な芸術に精通するクリエイター。モーテル・アネモネの常連で、アネモネで映画の撮影ができることをとても喜んでいる。
  • 結城マイMai Yuki
    アネモネのコンシェルジュ。欠席していた映画のヒロインは実の姉。姉へのコンプレックスが強いために、アンジュの計画に乗ってしまった。
  • 月下雄星Yusei Tsukishita
    主演俳優。お調子者の性格で、幽霊騒ぎの時は誰よりも大騒ぎしていた。ロバート・デニーロをリスペクトしている。
  • 堅山ヒロHiro Katayama
    コンシェルジュであり、堅山探偵事務所のホテル探偵。彼の周りには優秀な探偵助手が集まって来る。

泊まれる演劇 In Your Room『ROOM 103 2021.02.05 - 08 オンライン上演

モーテル・アネモネで殺人未遂事件が起きた。
被害者はオーナーの青柳健。スタッフルームで休んでいるところを背後から襲われた。一命を取り留めた健は、元探偵の経験を活かし、独自で犯人を探していた。そんな健を案じて、妹の青柳百音は、堅山ヒロと探偵助手に捜査協力を依頼をする。

そして事件当日の宿泊者の中から、新庄ユキ・音川組子、そして今は海外にいる犬養嵩の3人まで容疑者を絞り込んだ。しかし、なんと3人とも「自分がやった」と供述しているようだ。

探偵たちの捜査によって少しずつ真実が明かされていく。犬養は仕事のストレスで薬を大量に飲んだ副作用により夢遊病のような症状が、音川は泥酔による記憶の混濁が明らかになり、容疑者から外される。残る容疑者は新庄ユキ。しかし何か隠し事をしている百音も容疑者に。

隠し事を健に問い詰められ、百音は部屋を飛び出す。堅山と健が後を追う。しばらくして音川が様子を見に行くと、ロビーで堅山が倒れていた。更にロビーに置かれたPCモニターには、監禁され浴槽で気絶している健の姿が。浴槽にはどんどん水が注がれていく。また、百音も自身の部屋で拘束されていた。彼女たちは新庄ユキに襲われたらしい。

新庄ユキが犯人かと思われたが、探偵たちの推理で真犯人が明らかになった。ユキの双子の兄、新庄幸太郎だ。ユキは既に他界しており、幸太郎がユキになりすましていたのだ。

この事件の動機は、幸太郎による健への復讐だった。
幸太郎の父は、探偵だった頃の健に冤罪をかけられてしまい、世間から追い詰められ自殺してしまう。また父の事が大好きだったユキも後を追うように命を絶ってしまう。
幸太郎は自分たち家族のこと、妹ユキの存在を健に知って欲しくて一連の犯行に及んだ。探偵たちに諭され、幸太郎は自首を決意する。

  • 青柳 健Ken Aoyagi
    孤独に旅をする人の拠り所を作りたいという思いでアネモネを創業する。早くに両親を亡くしており、年の離れた唯一の家族である百音を娘のように可愛がっている。
  • 青柳 百音Mone Aoyagi
    人生で挫折した時に立ち寄ったモーテルが心地よく、自分もそんなモーテルが作りたいと思い、兄のモーテルを創業。推理小説が大好きで、部屋には読みかけの小説が多く積まれている。
  • 犬養嵩Sue Inukai
    エンターテイント事業を手掛ける世界企業の社長。仕事が上手く行かず、弱っていた時にアネモネに出会い救われた。弱い自分に寄り添ってくれていた百音に好意を抱いている。
  • 新庄ユキYuki Shinjo
    新庄幸太郎の双子の妹。探偵時代の健の捜査によって父を亡くし、そのショックで自殺してしまう。ユキの無念を晴らすために、幸太郎はユキの姿になって健を暴行してしまう。
  • 音川組子Kumiko Otokawa
    実は堅山の別れた妻。小説家として活動している。堅山に用があってアネモネに訪れたが、この事件に巻き込まれてしまう。
  • 堅山ヒロHiro Katayama
    ホテル探偵であり、音川の元夫。堅山は今回の事件を機に、より多くの人を助ける探偵になることを決意し、アネモネを離れ旅に出るのであった…。

泊まれる演劇『STRANGE NIGHT 2020.08.01 - 31 HOTEL SHE, KYOTOにてリアル上演

オーナーの妹である青柳百音は、コンシェルジュの中嶋と御子柴とともにモーテル・アネモネを切り盛りしていた。しかしオーナー代理として働き始めたばかりで仕事が上手く行かず、百音はコンシェルジュ達と馴染めずにいた。

この日、百音の友人であるアヤカも宿泊していた。
アネモネに来た宿泊客は、ロビーでアイスやお酒を片手にそれぞれの時間を過ごしていた。しかし19時になると、自分の部屋に戻れとコンシェルジュからアナウンスが。最近、夜が更けるとモーテル内でおかしなことが起こるそうだ。夜はこれからなのに…。宿泊客達が不満げに部屋に戻ると内線が鳴る。

「・・・1階の・・・ロビーに・・・おりてきてください・・・急いで・・」

囁くような声でそう言われ、アヤカや他の宿泊客たちはロビーに向かった。

集まってくる宿泊客を見ながらコンシェルジュたちは、誰も内線をしていないと驚いた顔をする。すると停電が発生、館内が暗闇に包まれる。百音が急いでブレーカーを上げると、アヤカたち宿泊客の姿が消えていた。パニックになるコンシェルジュたち。

3人の様子を見て更に驚いていたのはアヤカと、もう1人の男性コンシェルジュ、そして他の宿泊客たちだった。彼らは消えてはいなかった。ずっと一緒にロビーにいるのに、百音たち3人は宿泊客の声も聞こえず、姿も見えなくなってしまったのだ。コンシェルジュ曰く、これはモーテルの“呪い”かもしれない。

アネモネができる前、ここは“モーテルブラザー”という別のモーテルだった。とある従業員が謎の死を遂げ閉館し、何部屋かが開かずの部屋として当時のまま残っている。

その部屋に呪いを解く手がかりがあるかもしれない。男性コンシェルジュとアヤカを中心に、宿泊客が開かずの部屋を調べて回る。その結果、ブラザーのオーナーの弟である「満作」という男が“呪いのゲーム”を作り、従業員を呪殺した事が判明した。

当時からある倉庫の奥深くに今も眠っているそのゲームが、呪いの原因かもしれない。
呪いを解くために、危険を顧みず百音はゲームをプレイする。宿泊客の力を借りながらなんとかクリアすると、無事に呪いが解け、百音たちは宿泊客が見えるようになった。

このゲームは“呪いのゲーム”ではない。
百音と宿泊客のように、ゲームを通じて従業員と仲良くなるために満作が作った、優しさの詰まったゲームだった。百音とコンシェルジュ達もすっかり打ち解け、これから一緒にアネモネを盛り上げようと誓う。

ここまで宿泊客をまとめてリードしてくれた男性コンシェルジュに礼を伝えようと、アヤカは彼を探すが姿が見えない。百音たちもそんなコンシェルジュはいないと言う。
一体彼は何者だったのか。ひょっとすると彼が…。

  • 青柳百音Mone Aoyagi
    オーナーの妹で、最近オーナー代理として働き始めた。アネモネを良くしようと一生懸命仕事をするが、なかなか上手く行かず思い悩んでいる。
  • 中嶋Nakajima
    仕事のできるアネモネで一番優秀なコンシェルジュ。
    オーナー代理になった百音のことを認めておらず、未熟な百音を厳しい言葉で叱責することも。
  • 御子柴Mikoshiba
    ミスが多く、おっちょこちょい。宿泊客から怒られる事もあるが、ポジティブなノリと人柄もあって憎むことのできない男。
  • アヤカAyaka
    百音の相談に乗るためにアネモネに宿泊しに来たが、呪いにかかってしまい、それどころではなくなった。
  • 満作Mansaku
    モーテルブラザーのオーナーの弟。接客とゲームが好きで、夜な夜な宿泊客とゲームに興じていた。